あなたの痛みは脊髄で起きている
「痛みがなかなか取れなくて…」
「どこに行っても痛みが取れなくて…」
痛みに悩む人の多くはこのセリフを使います。
なぜ痛みは取れないのでしょうか。痛みを専門にするわたしにとっても、痛みの治療というのはいつも悩まされるのです。
医療やわたしたちのような手技を使う者に対して、患者さんは「治るでしょ?」ときいてきます。しかし、「治せます」と胸を張って即答できる人などこの世界にはいません。
「俺なら大丈夫!」という人も出てくるかもしれませんが、早々に「痛み」によって現実を思い知らされることでしょう。
痛みのというのはいつも難しくて、私たちを悩ます痛みには、「末梢の侵害受容器の活動を起こす、実際の、あるいは切迫した組織傷害、あるいは、体性感覚系の疾病や病変の明確な根拠がないにもかかわらず、変化した侵害受容から生じる痛み」というのがあります。これは、国際疼痛学会が「侵害可塑性疼痛」として2017年に定義されました。
痛みというのは、切り傷や火傷のように、障害された部位が目でわかり、治癒過程も目にすることができるわかりやすい痛みばかりではないのです。
先述した侵害可塑性疼痛というのは、腰痛などを想像してみるとわかりやすいものです。
腰痛は痛い部位を目で見ても何も見えません。傷があるわけでではないからです。しかし、痛みの感覚はあります。痛みの部位を見るために、皮膚の内側に入り込むことはできません。でも、痛みがあるということは生体にとって良くないことが起きていることは間違いありません。「動かすと痛い」「座っていると痛い」「朝起きると痛い」「夕方になると痛い」、その傷はどこにも見当たりません。
「変化した侵害受容性」は脊髄や脳で起きています。腰痛は脳や脊髄で痛みを起こしているというと「???」となってしまいます。
では、「治療は?」というと「脳や脊髄に影響する治療」でなくてはいけないのです。
「難しそう」と思われるかもしれませんが、それほどではありません。
悪い部位を触ると大抵の人が「あ-それです!」と声を上げます。その実感は脳で起きています。そして、その感覚が最も痛みを取るのに適した刺激なのです。
その証拠に、目に見えない「動くと痛い」「座ると痛い」などと言っていたその痛みが消えるではありませんか。そのことは紛れもなく脳や脊髄に影響したということになるのです。